1 労働審判と弁護士
弁護士に依頼せずに会社だけで労働審判に対応することは理屈上は可能ですが、労働法の知識や労働審判の経験などがないと、なかなか会社の反論を伝えることは簡単ではありません。労働者、会社ともに8割くらいが弁護士を選任していると言われています。
弁護士に依頼する場合、必要な打ち合わせを行います。このとき、証拠のピックアップも行います。
たとえば、元従業員から解雇無効を主張された場合、会社が用意すべき書類の代表例は、雇用契約書,解雇通知書,解雇理由書,就業規則,賃金規定等です。残業代を請求された事案では,給与明細、賃金規定、賃金台帳、就業規則、タイムカード、日誌等の労働時間や賃金が分かる記録です。
2 答弁書の提出
こうした打ち合わせを経て、答弁書を提出します。第1回期日で、労働審判委員会がある程度の心証を固めてしまうおそれがあるので、会社側の主張を余すことなく書いておくことが大切です。
答弁書の提出をするだけでなく、第1回期日でどのようなことを話すか等、準備を行います。というのも、労働審判手続では、初回から、口頭で様々な事実関係を聞かれ、その場で答えていく必要があるのです。ですから、会社側で誰を出席させるのが適当かを検討します。裁判所には事前に同行予定者を通知します。事案をよく知る担当者はもちろん、期日では和解が勧められる場合がありますから、中小企業では、決裁権限を有する社長も出席することが望ましいです。社長がどうしても出席できないときは、少なくとも、弁護士と電話ですぐに連絡がつく体制にしておきましょう。
3 口頭での主張も準備
こうして、答弁書と同行予定者を決めたうえで、漫然と裁判所に行くのではなく、会社の主張を裁判所に分かりやすく伝えるにはどうすればよいか、裁判所から質問されそうな部分はどこかなど、口頭での主張を準備しておく必要があります。