催告解除

建物賃貸借契約では、賃料滞納の場合、民法541条に基づいて契約を解除するには事前に催告が必要です。
(民法541条 当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。)

無催告解除特約

しかし、建物賃貸借契約において、「賃借人が賃料を一箇月分でも滞納したときは催告を要せず契約を解除することができる。」旨を定めた特約条項が入っている場合があります。無催告特約と呼ばれるものです。
もし、この特約条項がどんな場合でも有効に使えるのならば、賃貸人としては催告の必要がなくなりますが、賃借人にとっては厳しい事態となります。

この問題について、無催告特約に基づき、無催告で建物賃貸借契約を解除するには、「契約を解除するに当たり催告をしなくてもあながち不合理とは認められないような事情が存する場合」であることが必要とされています(最判昭和43年11月21日)。賃貸借契約が当事者間の信頼関係を基礎にしていることを理由にあげています。

そうすると、これまで賃料を滞納したことがなく、特に賃借人が問題を起こしたことがないのに、たった1度だけ家賃の支払いが遅れてしまったケースでは、無催告での解除は認められないでしょう。なお、このケースでは、催告をしたうえで解除する方法でも、同様に認めれないでしょう。

いずれにせよ、催告したうえで解除する方法よりも、無催告解除の方が、解除のハードルが上がります。
建物明渡請求は賃貸借契約の解除からスタートします。解除を無催告解除で行うと、「あながち不合理」かどうかが争点となり、余計に紛争性が増してしまう恐れがあります。

1週間ほどの催告期間をおけないほど切迫していない限り、無催告解除特約があっても、特約を使わず、催告をした上で解除する方が、後々のことを考えると良いだろうと感じています。

無催告解除特約がない場合

最判昭和27年4月25日は、「賃貸借の継続中に、当事者の一方に、その信頼関係を裏切つて、賃貸借関係の継続を著しく困難ならしめるような不信行為のあつた場合」において、「民法541条所定の催告は、これを必要としない。」としています。
よって、この場合には、無催告解除特約がなくても、無催告解除が認められます。

ただし、実際上、訴訟の前に、「賃貸借関係の継続を著しく困難ならしめるような不信行為」であると確定することはできません。賃貸人としては、賃借人が上記不信行為をしたと考えても、裁判所はそう考えないかもしれません。
したがって、無催告解除特約がないのに、無催告解除をするのは、あくまで例外的な場合に止めておくのが良いでしょう。

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